【インド】10日目 マザーハウス
「決して悲しい訳でもなく、つらい訳でもないのに、何故か涙が出て止まらないのだ。僕は僕自身の不可解な涙に動揺した。正直、訳がわからないのだ。生まれて初めて、路上にうずくまりながら生きる人々の姿や、ガンジス川のほとりでメラメラと燃やされる人々の姿、そして貧困ということ、差別ということ、その他いろいろなことをいっぺんに見せつけられて僕の頭は完璧にオーバーヒートしていた。」
蔵前仁一さんのゴーゴー・インド、冒頭箇所はとても有名で、インド旅行者なら一度は目を通します。
インドに関する小説や体験記はやまほどあり、出発前に手当たり次第読みました。
それぞれ独特の経験があり、人があって、旅があり、面白いのですが、帰ってから読むとまた一段と楽しむことができます。
帰国した時の僕は、まさに頭がオーバーヒート状態で、インドのあまりの刺激の多さに、それを吸収して理解することが出来ませんでした。
インドから帰って、早いもので明日でひと月。思い出が武勇伝となった今、ようやく経験を少しづつ受け入れ始めています。
この日、マザーテレサが生前に活動の拠点としたマザーハウスを訪れました。
現地の人は、マザーハウスと言っても通じません。Missionary of Charityといって分かる人が少しというレベル。目的地に着くまで苦労します。
近くには孤児院があり、前日までに登録すると、ボランティアをすることができます。僕は、直接訪れ、シスターに話をきかせてくださいとお願いすると、絶対に写真を撮らないという条件で、子供たちに会わせてもらえました。
ベッドがたくさん並んだ部屋では、世界各国からのボランティアが、子供たちにご飯を食べさせてあげていました。
そして、案内された広場には、いくつかの遊具と、40人ぐらいのこどもたちが遊んでいます。扉を開けて入ると、たくさんの子供達がぼくのところへ寄ってきて、きれいな目を輝かせます。短い時間でしたが、子供たちとはとても濃い時間を過ごしました。彼らはとても元気で、この孤児院をでた後はどんな人生を歩むのか、とても気になります。
シスターにお礼を言って建物をでると、そこには物乞いがいます。建物の中にいる子供たち、その一歩外でバクシーシをねだる子供。帰り際に、物乞いの彼女に投げられた石が、僕はトラウマでなりません。